太陽光ファンドのパフォーマンスを示す指標の一つに利回りがあります。ただ、利回りとひと口に言ってもいろいろな種類があり、太陽光ファンドに投資をする際、どの利回りを基準に太陽光ファンドを選べばよいのか迷われる方も多いのではないでしょうか?そこで、今回は太陽光ファンド投資でよく使われる利回りが表す意味合いを解説し、太陽光ファンドを選ぶ際の参考にしていただければと思います。
利回りとは
そもそも太陽光ファンドの「利回り」とは何でしょうか?一般的には、「利回り」とは、“一定期間における投資元本に対する収益の割合”のことを言います。
ここでポイントは“収益”は“インカム(収入)”だけでなく“売買損益”も含むということです。この点が預金などの金利の“利率”とは違います。“利率”は予め約束された元本に対する“インカム(収入)”の割合のことです。太陽光ファンドの場合、“インカム(収入)”は発電した電気の売電収入で、“売却損益”は太陽光発電施設を売却して得られる損益ということになります。しかしながら、太陽光ファンドで投資している太陽光発電施設が将来いくらで売れるかは分かりません。つまり、“売買損益”を太陽光ファンドがスタートする時点で見積もることは容易ではないというこです。したがって、通常、太陽光ファンドの「利回り」は“売買損益”を含まない“インカム(売電収入)”のみを考慮した一定期間(通常は1年あたり)の出資額に対する売電収入の割合のことをいいます。
利回りの種類
太陽光ファンドの基本的な「利回り」の考え方はお分かりいただけたでしょうか?では、この利回りをベースとしてよく使われる「利回り」についてご紹介していきたいと思います。よく使われる「利回り」には、「表面利回り」、「想定利回り」、「分配利回り」があります。
表面利回り
「表面利回り」は上記で説明した基本的な「利回り」そのものと言ってよいでしょう。つまり、“一定期間(1年あたり)の投資元本に対するインカム(売電収入)の割合”を「表面利回り」といいます。
なぜ、「利回り」と言わず、わざわざ「表面利回り」と言っているのか。それは、提示される「利回り」にはいろいろあって単に「利回り」と言ってしまっては紛らわしく誤解と招く可能性があるからです。「表面利回り」といわれれば、“そっか、売電収入だけを考慮して計算された出資額に対する売電収入の割合だな”とすぐに理解できるからです。もし、「利回り」とだけ書かれていたら、是非、「表面利回り」のことか確認しましょう。というのも、「表面利回り」は費用を考慮していないので実際(実質)の投資リターンより高くなっているからです。
想定利回り
「想定利回り」は「表面利回り」と違い、売電収入から費用を差し引いた収入をもとに計算された「利回り」です。この点で実際(実質)の投資リターンにより近くなっています。
例えば、1年間の「想定利回り」が10%で投資期間20年の太陽光ファンドに投資をしたといましょう。この場合、投資元本に対して費用控除後で10%の売電収入があることを意味しています。したがって、20年間で合計で10%×20年=200%の費用控除後の売電収入があることになります。そして、200%から投資元本(100%)を差し引けば、100%(200%-100%=100%)の運用益があったということになります。つまり、20年という時間はかかりますが、元本が2倍になって戻ってくることが期待できるということです。
これは元本を費用控除後の売電収入で回収するという考え方です。というのも、「利回り」の項目のところでも申し上げましたが、太陽光発電施設が将来いくらで売れるかはスタート時点では想定することは難しいからです。
発電終了後の太陽光施設はどうなるの?
一般的に3つのケースが考えられます。
①太陽光施設を売却する
②引き続き発電をして売電をする
③施設を解体し処分する
これまでも述べてきたようにスタート時点で①②を想定して金額を見積もるのはなかなか難しいでしょう。③はスタート時点で費用を見積もり毎年売電収入から積み立てる計画にしておけば「想定利回り」に含まれることになり問題になることはないでしょう。したがって、③を想定しつつ①②のケースについては太陽光ファンド終了時のボーナス程度に考えておくのが良いのではないでしょうか。
「想定利回り」で注意すべきポイントは?
あくまでも想定の利回りである
売電収入は天候データを統計的に使用することや過去の売電実績である程度予測できますが、絶対ではないということです。大きく売電収入が違うことはないでしょうが、ピッタリ計画通りになることはありません。また、費用もある程度見積もることはできますが、長期に渡る投資なので、これも見積もりより多くなることもあるでしょう。
太陽光施設の売却を当てにしていないか
太陽光ファンドが提示する「想定利回り」に売電終了後の太陽光施設の売却収入を当てにしていないか確認することです。もし、売却収入を想定しているようであれば、売却収入を含まない「想定利回り」の確認をした方がよいでしょう。何度も申し上げたように、将来の売却金額をスタート時点で想定することは難しいので、これを頼りにしない方が良いと思います。
税金は考慮されていない
運用収益に係る税金が考慮されていないということです。税率については出資者それぞれの事情により違ってきますので、税理士に確認されることをお勧めします。ただし、税引き前とはいえ太陽光ファンドの投資リターンがどのくらいになるかは大事なポイントなので、「想定利回り」を投資リターンの判断の尺度として使うことは有意義ではないでしょうか。
分配利回り
分配金という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。分配金は投資信託でもよく使われます。一般的に分配金はファンドの運用実績の中から投資家または出資者の方にお支払いするお金のことです。太陽光ファンでも出資者へ定期的に運用実績からお金をお支払いします。太陽光ファンドでは出資額に対してこの支払われる分配金の割合のことを「分配利回り」といいます。
投資信託などと同じですね。ただし、注意しなくてはいけない点は「分配利回り」= 運用実績ではないということです。分配金は運用実績だけから支払われるわけではないからです。分配金には利益の分配に加えて出資元本の返還が含まれていることがあります。したがって、太陽光ファンドの投資リターンの優劣を「分配利回り」だけで判断することは避けた方が良いと思われます。
まとめ
太陽光ファンドで良く使われる利回りとして「表面利回り」、「想定利回り」、「分配利回り」を取り上げてきましたが、それぞれの「利回り」の違いをお分かりいただけたでしょうか。「表面利回り」はざっくりと太陽光ファンの比較をする際にはとても便利です。ただ、かかる費用は太陽光ファンドが投資する太陽光発電施設によって違ってきます。したがって、より精緻な比較をしたいときは「想定利回り」を使うことをお勧めします。ただし、「想定利回り」にも注意すべき点があることをお忘れなく。「分配利回り」は実際に支払われるお金の出資額に対する割合です。運用実績とは必ずしも一致しませんので、ご注意ください。「利回り」は投資判断の重要な指標です。違いをよく理解して太陽光ファンド投資のお役立てください。